Lバンド合成開口レーダデータを用いた樹種分類

 
 森林バイオマス(森林資源の量)は大気環境に重要な影響を与えるため、高精度推定法の開発は非常に期待されている。Lバンドマイクロ波は森林に対して地面までの透過性があり、樹冠から地面上の根元までの情報を収集することができるため、XバンドやCバンド等の波長がより短いマイクロ波に比べて森林バイオマス推定に最適であると言われている。バイオマスの高精度を実現するため、森林の範囲、木の高さ、および木の分布密度のみならず、樹種も欠かせない情報である。しかし、人工衛星搭載Lバンド合成開口レーダデータによる樹種分類は従来の解析法では極めて困難である。これに対し、本研究室は先行研究で提案したストークスベクトルに基づく解析法における、局所区域の水平と垂直構造の割合に感度がよい「配向パラメータ(orientation parameter)」という特徴量を用い、針葉樹と広葉樹の枝の形態の差異(針葉樹の枝が主に水平に、広葉樹の枝が主に斜め上に伸びている)を考量して、Lバンドデータによる針葉樹と広葉樹の分類が成功した。(例:図1)

図1 (左) 環境省生物多様性センターに提供された調査データ。(右) Lバンド合成開口レーダデータによる樹種分類結果。データ:尾瀬国立公園エリアに対するALOS2-PALSAR2データ。

    

参考文献:F. Shang, T. Saito, S. Ohi, and N. Kishi, “Coniferous and Broad-Leaved Forest Distinguishing Using L-Band Polarimetric SAR Data”, IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, 59(9), 7487-7499, 2021.

PAGE TOP