ストークスベクトルに基づく偏波合成開口レーダデータ解析法

 現在までのPolSARデータ解析法研究では,主流なものは全てcoherency(T)またはcovariance(C)行列に基づく方法である。しかし,C/T行列は複雑形態の目標の識別に非常に重要である「偏波度」という物理量を表現できない。このため,解析性能の向上が理論的に制限されている。これに対し,本研究室は,各従来法と全く異なり,革新的な視点によるストークスベクトルに基づく解析法を提案した。ストークスベクトルはC/T行列の全ての散乱情報のみならず,偏波度も表現でき,より多くの散乱情報を含める。従って,提案した解析法は,各従来法では散乱情報の利用率が低いという難局を打破し,目標識別性能を顕著に向上させた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のPolSAR搭載陸域観測衛星(ALOS)のデータによって,東京港等の多くのエリアに対する識別性能を評価し,当該方法が高性能であり,特に従来は困難であった斜めあるいはランダムな向きで分布している人工物や孤立人工物などの識別において高い性能を示すことを実証した。(例:図1)

東京港エリアのGoogle写真
ALOS-PALSARデータによる従来法
提案法
図1:東京港エリアのGoogle写真(左),および,ALOS-PALSARデータによる従来法(中)と提案法(右)を用いた人工物識別結果。
(東京港の全体は人工物に覆われている。PolSARの解析結果では,人工物に対するピクセルは赤系の色であるべきです。)

参考文献:F. Shang, and A. Hirose, “Averaged Stokes Vector Based Polarimetric SAR data Interpretation”, IEEE Trans. on Geoscience and Remote Sensing, vol.53 (8), pp.4536-4547, 2015.
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