合成開口レーダデータ解析における行列回転法の改良

  散乱モデルに基づくデータ分解法は合成開口レーダデータの重要な解析法の一つである。当該解析法において、基本モデルは標準座標系によって定義されている。しかし、実際の観測では、データは人工衛星のシステム座標系によって記録されている。標準座標系とシステム座標系は差異があるため、解析法の性能が制限されている。この差異の影響を低減するため、T/C行列の回転変換が広く使用されている。従来の行列回転法はすべてのターゲットに対して同じ回転操作をしている。この原因で、森林等の区域に対して回転過度、人工物に対して回転不足という問題がある。これに対し、本研究はターゲットの形態特徴に応じて異なる回転操作を実施する行列回転法を提案した。当該操作はデータの前処理の一部であり、原始データをより正確性が高い散乱情報が提供できるように校正することができる。従来回転法と提案した回転法で校正したデータをそれぞれに同じ四成分分解法(Y4)で解析した結果を比較した。提案法+Y4の解析性能は従来の組み合わせより大幅に向上したことが実証した。(例:図1)

図1:(左)従来回転法+Y4解析,(右)提案回転法+Y4解析,提案法を用いた解析結果は都市区域における二回反射を表す赤系のピクセルが多くなった。(都市区域は人工物が多いため、二回反射は理論的に高いである。)

参考文献:F. Shang, X. Huang, H. Liu, and A. Hirose, “Data Arrangement with Rotation Transformation for Fully Polarimetric Synthetic Aperture Radar”, IEEE Geoscience and Remote Sensing Letter, 17(3), 436-440, 2019.

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